インボイス制度をめぐり与党が提案する「激変緩和措置」に反対する声明

インボイス制度の中止を求める税理士の会
事務局長・税理士 菊池純

私たちはインボイス制度の中止を求める税理士で組織された団体である。

本年11月30日、自由民主党と公明党の税制調査会は、適格請求害等保存方式の導入にあたって免税事業者対策等として2つの 「激変緩和措置」を導入することで一致したと発表した(12月1日付日経新聞朝刊等の報道)。

1つは、売上高1,000万以下の免税事業者が課税事業者を選択した場合、3年間に限り、納税額を売上げに係る消費税の2割を上限とするというものである。

これは、一時的に税額を減額して免税事業者を課税事業者に誘導しようとする姑息な手段で断固反対する。

適格請求書等保存方式は現在すでに消費税の課税事業者となっている315万に加え、1000万いるといわれる免税事業者が課税事業者となり、適格請求書発行事業者の登録申請をすることで運用可能となるものである。 ところが、インボイス制度は難解なうえ周知されておらず、多くの中小事業者が自分にかかわる制度であるか否かさえわからない状況である。

そうした状況を無視し、やみくもに登録申請をさせようとする与党税調の「緩和措置」は到底、中小事業者や税理士の理解を得られるものではない。

またこの「緩和措置」は、 簡易課税を選択したフリーランスなどのみなし仕入率 50%を80%にするものと思われるが、簡易諜税選択届を提出しなかった一般課税の事業者に対する取扱いはどうするのであろうか。 3年間の時限措置とはいえ、あまりにも粗雑・不公正な仕組みである。

2つは、 売上高1億円以下の事業者に限り、 6年間、 1万円未満の取引は適格請求書発行なしに仕入税額控除ができるというものである。 

この措置も「正確な仕入税額を行うためにインボイス制度にする」という政府の考え方に矛盾するばかりか、 ただでさえ複雑な仕入税額控除の仕組みをより複雑にし、 中小事業者の負担をむしろ大きくするものであり断固反対する。

いったい1億円はいつの時点の売上で判断するのであろうか。 2事業年度前の基準期間とするなら、進行期の実態を反映しないし、進行期とするなら決算が終わらない限り売上高はわからない。そもそもインボイス制度の下では日常的に多発する少額取引(例えば旅客運賃等)は非課税にする措置が必要不可欠である。それを課税にするからこうした愚策をとらなければならなくなるのである。

以上、与党税調提案のように免税事業者を課税事業者に誘導し、消費税の仕組みをいたずらに複雑にする「緩和措置」は、 中小事業者にとって根本的な解決策にほど遠いものであり断固反対する。

消費税導入後34年経過し、わが国の帳簿方式は「税制改革法」に規定するように、「取引慣行及び納税者の事務負担に極力配慮したもの」として定着しており、 インボイス制度に変更する必要性は全く認められない。 重ねてインボイス制度の中止を求めるものである。


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