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私たちがインボイス中止を求める理由


インボイス制度の中止を求める税理士の会
2023年7月更新
2022年6月

2022年度の日本の税収は71.1兆円で過去最高になり、前年より4兆円増えたと発表がありました。税収のうち最多は3年連続消費税で前年度から1兆円以上増えて23兆792億円になったとの事です。

物価が1%上がると消費税が2,000億円増えると言われており、5%で1兆円の増税でつじつまが合いますが、物価上昇時に減税しないことは消費税増税と同じです。

このような時に、税率を変えない消費税増税であるインボイス制度を2023年10月1日より実施することは、日本経済における諸取引に大きな混乱をもたらし、日本経済発展の大きな障害になることは間違いありません。

そこで、我々税の専門家の税理士は、日本のためにインボイス制度に反対の意見を言っていく必要があると考えます。

(1)日本の消費税は帳簿方式を継続する必要があります

インボイス方式の売上税が廃案になった後、消費税を導入するためには、インボイス方式に比べて書類の保存に関する納税義務者の事務負担が大幅に軽減され、免税事業者が取引から排除されるなどといった問題が生じない帳簿方式を選択する必要がありました。

さらにこの方式は、法人税や所得税と同じように事業者の行う帳簿記録と計算を基に納付税額を算出することとされており、このことも帳簿方式を選択した大きな理由になっています。

つまり、日本の消費税制度はインボイス方式を導入しない前提で、1988年(昭和63年)に成立しました。

(2)帳簿方式とインボイス方式の併用はあり得ません

ヨーロッパ等のインボイス方式は、売上にかかるインボイス及び仕入れにかかるインボイスを集めて集計し差引して税額を出す単純簿記の世界です。帳簿は付けず、ゆえに所得税、法人税の申告期とは関係ない時に消費税の申告を行います。

ところが、いま日本で導入されようとしているインボイス制度は、仕入税額控除のために、帳簿およびインボイスの保存が必要とされており、世界一複雑な割り戻し方式のインボイス制度に基づく方式となっています。

政府は、インボイス制度の導入による過度な事務負担がもたらす巨額の経済損失の代償として、どのようなメリットがあるのか、明確に説明がなされていません。

(3)免税制度の形骸化

消費型付加価値税を導入する西側諸国での常識は、課税事業者は「インボイスまたは資料」を有していれば、仕入税額控除ができる、という考え方です。

つまり、この面での西側諸国の常識は、仕入税額控除を事業者の権利として認めるわけで、請求書等に加え、帳簿の保存がないと仕入得税額控除ができないという考え方は、付加価値税の基本とぶつかる方向に進んでいると言わざるを得ません。

帳簿方式は消費税を納税しない免税事業者や消費者からの仕入等も控除対象とするから控除額が不正確であるかのようにいわれますが、経済に対する中立性を確保するためには、課税の累積を排除する方式が必要とされ、仕入等の事実を担保する請求書等の保存があればその目的は充分達成させられると思料します。

(4)消費税は消費者が払う税金ではなく、事業者が払う税金なので、益税が発生することはありません

消費税を負担するのはよく消費者だと言われますが、法律上の納税義務者は事業者です。消費税は事業の売上にかかる事業者に対する外形標準課税です。

ある消費者グループが「消費税は事業者が消費者から預かった税金なのだから、それを国に納めるのは当たり前で、免税事業者がいるのはおかしい」と、国を相手取って訴えました。

これに対し判決は、「事業者は納税義務者であるが、徴収義務者ではない。そして消費税相当部分はあくまでモノやサービスの対価の一部に過ぎない。事業者と消費者の間には、税を取る、取られる、という関係はなく、消費者は一度も消費税を事業者に払ったことや、預けたこともない。反対に、事業者は預かったこともない」というものです。

(5)インボイス制度はただの増税です

財務省はインボイス導入により、およそ161万の免税事業者が課税事業者になることにより2,480億円増収になると述べていますが、これを逆算すると1者あたりの増税額は15万4000円になります。

インボイス制度は、今までの免税事業者が課税事業者になって消費税を納めても、また免税事業者のままで、取引先の課税事業者が消費税分を負担しても、消費税額が増える、税率をいじらない増税です。すると、双方から取る増税額は、上記、15万4000円に500万の全免税事業者を掛ければ7,700億円にのぼります。

さらに、政府がインボイス登録を促すダイレクトメールを送った免税事業者の数は1,286万者で、この人数の免税事業者がいるとすると、2兆円規模の大増税となることが予想されます。

以上の理由により「インボイス制度の中止を求める税理士の会」は、インボイス制度導入の中止を強く求めます。