インボイスを少子化対策の財源にする矛盾 ─ 子育て世代にはインボイス中止しかない

2024年1月11日
インボイス制度の中止を求める税理士の会
代表・税理士 菊池純

インボイスによる消費税収を少子化対策に

政府が2023年12月11日発表した「こども未来戦略」案の中で、少子化対策の安定した財源の確保として、「インボイス制度導入に伴う消費税収相当分も活用する」と言明した。

2028年度までに国・地方あわせて追加で確保する年3.6兆円のうち、既存予算の使い道の見直しなどで捻出する1.5兆円の一部としてインボイス制度による増収分を充てる、としている。

インボイスは税率を変えない消費増税である

消費税の実態は、事業者に課される付加価値税であるから、担税力のない赤字の事業者にも課税されてしまう。そのため、事業者免税点制度が必要なのである。

それが、インボイス制度によって事業者免税点制度は事実上崩壊してしまい、税率を変えない消費税の増税となる。

「インボイスで手取りが減る」子育て世代の深刻な声

この免税事業者やその取引先からの増税分を「こども未来戦略」に使うことは、弱者から取って弱者にまわすことになり、「あるところから取ってないところへまわす」という所得再分配原則に反する。

免税事業者・フリーランスに対するアンケートからは「子育てのためにサラリーマンをやめ、業務委託にしたのに、手取りがもっと減ると困る」「インボイスで生活が苦しくなることは目に見えている。家族計画も考える年齢だが、子どもを育てる自信がない」などの声が寄せられている。

少子化対策の1番の方法はインボイス中止

政府は、「インボイス制度は事業者同士の取引で発生する消費税額を計算しやすくし、正確に課税するために導入した。増税を目的としたものではない」(鈴木俊一財務相)と説明してきた。また、「こども未来戦略」案には、「少子化対策の財源確保のための消費税を含めた新たな税負担は考えない」との記述がある。

重ねて言うが、インボイス制度は免税事業者を狙った増税であり、免税事業者や零細事業者が多数存在する子育て世代を直撃するものである。インボイス制度導入による増税分を少子化対策に使うことは論理矛盾していると言える。

以上のように、我々はインボイス制度導入による消費税収相当分を少子化対策に活用することに断固反対する。少子化対策の1番の方法はインボイス制度の中止である。